ひきこもり100万人時代、団塊ジュニア世代の現在地


2019年、内閣府の調査で40〜64歳のひきこもり状態にある人が推計約61万人とされ、15〜39歳の推計約54万人を上回ったことが大きく報じられました。若い人の問題と思われがちだったひきこもりが、団塊ジュニア世代や就職氷河期世代の問題としても見え始めた時期だったと思います。

その後、2022年度の内閣府調査では、15〜64歳でひきこもり状態にある人は全国で推計約146万人とされています。調査の定義や方法によって数字の見え方は変わりますが、少なくとも「一部の特殊な人の問題」とは言えない規模になっています。

私自身、2019年当時は44歳でした。報道で中心世代として挙げられていた40代前半に、まさに自分も含まれていました。就職氷河期に大学を出て、もし就職がうまくいかなかったら、自分もどこかで社会との接点を失っていたかもしれない。そう思うと、ひきこもりは自分とまったく無関係な話ではありません。

団塊ジュニア世代に重なる問題

ひきこもりという言葉には、長く若者のイメージがありました。不登校や進学、就職の失敗をきっかけに、家に閉じこもるようになる。そうしたケースはもちろんあります。

ただ、2019年の調査で40代前半が大きく取り上げられたことには、やはり世代的な意味があると思います。団塊ジュニア世代は人口規模が大きく、社会に出る時期に就職氷河期と重なりました。競争率が高く、景気も悪く、新卒一括採用の入口でつまずくと、その後の立て直しが難しかった世代です。

一方で、中高年のひきこもりでは、退職、職場での人間関係、病気、介護、家族関係、経済的な行き詰まりなど、きっかけはより複雑になります。2022年度の内閣府調査でも、40代以上では「退職したこと」が理由として多く挙げられています。

若いころに社会との接点を失ったまま長期化する人もいれば、いったん働いていたものの、退職や病気をきっかけに外に出づらくなる人もいる。ひきこもりは、年齢や性別だけで単純に語れるものではないのだと思います。

就職氷河期世代の重さ

就職氷河期世代は、社会に出る入口でかなり厳しい状況に置かれました。

新卒一括採用の仕組みが強い日本では、最初の就職でつまずくと、その後のキャリアを立て直しにくい面があります。正社員になれず、非正規や短期の仕事を転々とし、年齢を重ねるほど応募できる仕事が狭くなる。そうした構造の中で、社会との接点を失っていった人も少なくないはずです。

もちろん、すべてを時代や制度のせいにできるわけではありません。本人の性格、家庭環境、学校での経験、人間関係の苦手さなど、個別の事情もあります。

ただ、自己責任だけで片づけるには、就職氷河期世代が受けた影響は大きすぎます。うまく社会に乗れなかった人を、あとから「努力が足りなかった」とだけ言うのは、あまりに雑だと思います。

家庭だけで抱えきれない

中高年のひきこもりで難しいのは、本人だけでなく家族も高齢化していくことです。

親が年金で子どもの生活を支え、子どもは社会との接点を持てないまま年齢を重ねる。いわゆる「8050問題」と呼ばれる状況です。親が元気なうちは何とか生活できても、介護や病気、親の死によって一気に生活が立ち行かなくなる可能性があります。

この問題は、家族の中だけで解決するには重すぎます。

本人が外へ出る気持ちになれない。家族もどこに相談してよいかわからない。世間体を気にして外部に言えない。そうして時間だけが過ぎていくと、選べる手段は少しずつ減っていきます。

だからこそ、早い段階で相談できる場所や、いきなり就労ではなく人と関われる場所が必要なのだと思います。

いきなり働くことだけをゴールにしない

ひきこもりの話になると、つい「働くべきだ」という話になりがちです。もちろん、収入を得ることは生活の基盤になりますし、何らかの形で社会と関わることは大切です。

ただ、長く社会から離れていた人に対して、いきなりフルタイムで働くことを求めても、うまくいかないことの方が多いはずです。

まずは相談する。家族以外の人と話す。居場所に参加する。短時間の作業をする。地域活動やボランティアに触れる。オンラインでもよいから、社会との細い接点を作る。そうした段階を踏むことが必要な人も多いと思います。

就労支援も、単に人手不足の業界へ押し込むのではなく、その人の状態や得意不得意に合わせて考えるべきです。介護や福祉の仕事も、優しさだけで務まるものではありません。専門性も体力もコミュニケーションも必要です。だからこそ、本人に合った道を探す支援が要ります。

社会との接点をどう作り直すか

ひきこもりの問題で大事なのは、「本人が悪い」「家族が悪い」と責めることではないと思います。

本人が社会に戻りたいと思っても、年齢、職歴、体調、人間関係への不安が壁になります。家族も、長く支えているうちに疲弊します。支援機関につながるにも、心理的なハードルがあります。

それでも、何もしないまま時間が過ぎるほど、本人も家族も追い詰められていく。

だから必要なのは、説教ではなく、接点です。相談窓口、居場所、家族会、地域の支援センター、短時間の仕事、オンラインでの相談。社会との接点を一つずつ作り直すことが、最初の現実的な一歩になるのだと思います。

まとめ

ひきこもりは、本人の弱さだけで説明できる問題ではありません。家庭環境、学校、職場、雇用制度、景気、病気、家族の高齢化など、いくつもの要因が重なって起きます。

一方で、本人や家族だけで抱え続けるには、あまりに重い問題です。

就職氷河期世代が中年になり、さらに親世代も高齢化していく中で、ひきこもりは社会全体の課題になっています。自己責任だけで突き放すのではなく、かといって現実から目をそらすのでもなく、どうすればもう一度社会との接点を作れるのかを考える必要があります。

自分も、少し条件が違えば、同じ場所にいたかもしれない。

そう考えると、この問題は決して他人事ではありません。

参考文献・出典

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