W杯中継で見えた、BS4Kが活用されない違和感


カタールW杯は、ABEMAで全64試合を無料配信してくれたことが本当に大きかったと思います。テレビで放送されない試合も含めて、スマホやタブレット、PCで見られる。これは素直に素晴らしい体験でした。

一方で、日本代表戦のような大きな試合では、やはりテレビで見たい気持ちもあります。遅延が少なく、リビングの大きな画面で見られる。家族で同時に見やすい。スポーツ中継に関しては、まだテレビ放送の強さも残っています。

だからこそ、今回あらためて気になったのがBS4Kです。

NHKはドイツ戦をBS4Kで放送していました。しかし、民放が放映権を持つ試合では、地上波では放送されてもBS4Kでは見られない。せっかく4Kテレビがあり、BS4Kという放送波もあるのに、肝心の大型スポーツ中継で活用されない。

これは、なかなか残念な状況だと思います。

ABEMAは素晴らしかった

今回のW杯で、ABEMAの存在感はかなり大きかったと思います。

全試合を無料で見られることに加えて、見逃し配信やハイライトも使いやすい。テレビで見た試合をあとから見直す、テレビで放送されない試合をABEMAで見る、という使い分けが自然にできました。

実際、日本対スペイン戦ではABEMAの視聴数が大きく伸び、クロアチア戦ではアクセス集中により新規視聴を制限する場面もありました。日本代表の躍進もあって、配信サービスとしてのABEMAが一気にスポーツ中継の主役に近づいた印象があります。

ただ、ABEMAは配信サービスです。便利ではあるものの、テレビ放送と比べると遅延がありますし、4K放送として楽しめるわけでもありません。

スポーツ中継、とくに日本代表戦のような国民的イベントでは、「テレビの安定感」と「配信の自由度」がどちらも必要なのだと思います。

では、BS4Kは何のためにあるのか

問題は、BS4Kです。

4Kテレビを買い、BS4Kも受信できる環境があるのに、肝心の見たい番組がない。普段から民放BS4Kを見ていても、目玉になるようなコンテンツは少なく、ショッピング番組や再放送が目立つ印象があります。

もちろん、すべての番組を4Kで作るのは簡単ではありません。制作コストも、放映権の契約も、編成上の都合もあるはずです。W杯のような国際大会では、放映権の範囲や配信・放送の権利処理も複雑でしょう。

それでも、放送波という公共性の高いインフラを使っている以上、ただ枠を持っているだけでは物足りません。

テレビ局が4K放送を本気で育てるつもりなら、こういう大きなスポーツイベントこそ、BS4Kで放送してほしかった。地上波で見られること自体はありがたいのですが、せっかくの4K放送が活用されないままなら、4Kテレビを持っている意味が薄れてしまいます。

地上波だけではテレビ離れは止まらない

テレビ離れと言われて久しいですが、個人的には「テレビという機器」が不要になったというより、「テレビ放送の体験」が古くなっているのだと思います。

Netflix、Apple TV、Amazon Prime Videoなどでは、4K対応コンテンツが普通にあります。スポーツ以外の映像体験では、すでに配信サービスの方が高画質で便利な場面も多い。

一方、テレビ放送は、いまだに地上波中心のままです。

地上波で多くの人に届けることは大事です。ただ、4K放送という上位の体験を用意しているのなら、そこにふさわしいコンテンツを出してほしい。特にW杯のようなイベントは、テレビがまだ強いことを見せられる数少ない機会です。

そこでBS4Kが使われないのであれば、結局、視聴者は配信サービスへ流れていきます。

放送波を持つ責任

民放各局にも事情はあると思います。W杯の放映権料は高く、地上波でスポンサーを集める必要もある。BS4Kで同時放送することが、ビジネスとして簡単ではない可能性もあります。

それでも、放送波は限られた資源です。許認可のもとで使っている以上、どのような価値を視聴者に提供しているのかは問われるべきだと思います。

BS4Kが、ただの空き枠や通販番組の受け皿のように見えてしまうなら、それはかなりもったいない。

せめて日本代表戦や決勝トーナメント、オリンピックのような大型スポーツイベントでは、地上波とBS4Kの役割をきちんと考えてほしい。地上波で広く届け、BS4Kで高画質に楽しめる。そういう選択肢があって初めて、4K放送の意味が出てくるのだと思います。

まとめ

ABEMAが全試合を配信したことで、W杯の見方はかなり変わりました。これは大きな前進です。

でも同時に、テレビ放送、とくにBS4Kの存在感の薄さもはっきり見えました。

地上波で見られるだけで十分、という時代ではありません。4Kテレビが普及し、配信サービスでは4Kが当たり前になりつつある中で、放送側が4Kを活用しないままなら、テレビ放送の価値はさらに下がっていくと思います。

せっかくBS4Kという仕組みがあるのなら、こういう時に使ってほしい。

W杯を見ながら、そんなことを強く感じました。

参考文献・出典

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